アルミニウムの比重は2.7g。鉄(7.8)や銅(8.9)と比べると3分の1です。軽量化による性能向上が時代のニーズとなっている今、特に自動車、鉄道車両、航空機など輸送分野で多くのアルミニウムが使われています。また軽さを生かして、各種機械の高速回転部品や摺動部品の作業効率を高めたり、装置の大型化による重量増加を押さえるなど、さまざまな効果をもたらしています。
アルミニウムは比強度(単位重量あたりの強度)が大きいため、輸送機器や建築物など構造材量として多く使用されています。
純アルミニウムの引張強さはあまり大きくありませんが、これにマグネシウム、マンガン、銅、けい素、亜鉛などを添加して合金にしたり、圧延・引抜などの加工や、熱処理を施したりして、強度を高くすることができます。
アルミニウムは空気中では緻密で安定な酸化皮膜を生成し、この皮膜が腐食を自然に防止します(皮膜の自己補修作用)。
耐食性を更に高め、強度も兼ね備えたアルミ合金は各種の用途に採用されており、特に建築、自動車、船舶、海洋開発などの分野ではこの特性が多いに生かされています。
アルミニウムは塑性加工がしやすく、さまざまな形状に整形することが可能です。
また、できあがった製品素材をさらに成形加工したり、製品の表面などに精密加工を施したりすることも比較的容易です。また切削加工性にも優れており、金型などの工具類や機械部品にも使われています。
アルミニウムはト導電体としてきわめて経済的な金属です。電気伝導率は銅の約60%ですが、比重が約3分の1であり、そのため同じ重さの銅に比べても2倍もの電流を通すことができます。現在では高電圧の送電線の約99%に採用されるとともに、導体(板・管)などに広く使われており、エネルギー利用、エレトロニクス分野での需要が大きく伸びています。
アルミニウムは非磁性体で、磁場に影響されません。この特徴は、アルミニウムの他の特性である、軽い・耐食性に優れる・加工性がよい、などと組み合わせることによって、さまざまな製品に生かされます。おもな製品としては、パラボラアンテナ・船の磁気コンパスなどの計測機器・電子医療器具・メカトロニクス機器などがあげられますが、さらにはリニアモーターカーや超電導関連機器にいたるまで、その用途が大きく広がっています。
アルミニウムの熱伝導率は鉄の約3倍。熱をよく伝えるということは急速に冷えるという性質にもなります。そのため冷暖房装置・エンジン部品・各種の熱交換器・ソーラーコレクター、また飲料缶にもこの特性が生かされています。最近の高密度化した機器、システムの過熱防止のための放熱フィンやヒートシンクとしても使われています。
また、この性質を利用して、プラスチックやゴムの成形用金型などの新分野にもアルミニウムが使われます。
アルミニウムは鉄鋼などと違って液体窒素(-196℃)や液体酸素(-183℃)の極低温下でも脆性破壊がなく性が大きいのが特徴です。低温プラントやLNG(-162℃)のタンク材として使われるうえ、最近では宇宙開発やバイオテクノロジー、極低温の超伝導関連といった最先端分野でもこの特性が脚光を浴びています。
よく磨いたアルミニウムは、赤外線や紫外線などの光線、ラジオやレーダーから発する電磁波、さらに各種熱線をよく反射します。純度の高いアルミニウムほどこの性質は優れており、純度99.8%以上のアルミニウムは放射エネルギーの90%以上を反射します。この特性を生かしたのが暖房器の反射板・照明器具、および宇宙服などで、最近ではアルミニウムに鏡面加工を施してこの特性をいっそう高め、ポリゴンミラーをはじめとしたヒカリエレクトロニクス製品にもよく使われています。
アルミニウムは素地のままでも美しい金属ですが、陽極酸化皮膜処理(アルマイト処理)などさまざまな表面処理を施すことによってより美しくなり、また表面を硬くしたり、防食効果を高めたりすることができます。陽極酸化皮膜処理の際に自然発色や電解着色などによってアルミニウムに多彩な色を付けることが可能であり、建築外装や包装材などデザイン性が強く求められる分野に最適の材料です。
アルミニウムは、融点が低い・溶けた状態でも表面が酸化皮膜で覆われガスを吸収しにくい・湯流れがよいといった性質を持っています。このため薄肉の鋳物や、複雑な形状の鋳物を作ることができます。アルミの鋳造品は、ピストン・シリンダーブロック・ホイールなどの自動車の部品、また各種産業機械部品など幅広い分野で使用されています。
溶接・ろう付け・はんだ付け・電気抵抗溶接・リベット接合・接着など、さまざまな方法で容易に信頼性の高い継手が得られます。これらの接合技術の進歩はめざましく、より多くの分野で設計と施工の合理化を実現します。
アルミニウムを真空装置の材料に使ったとき、ガス放出率が非常に小さく真空到達性能が他の材料に比べて大変優れています。そこで、各種の高真空ポンプや配管・高真空半導体装置・理化学実験装置などに活用されています。
アルミニウムは他の金属と比べると酸化しにくく、融点が低いため、使用後のアルミ製品を溶かして簡単に再生することができます。しかも二次地金(再生地金)を作るのに必要なエネルギーは、新地金を作る場合と比べてわずか3%ですむといわれています。また品質的にも、新地金とほとんど変わらないものが製造できるため、大変経済的な材料だといえます。
とくに飲料缶では、空缶を回収し再資源化しようというリサイクル運動が全国各地で行われており、省資源・省エネルギーを果たすとともに、地球環境保護の推進にも大変大きな役割を担っています。 このことは、今後ますます増加するアルミ需要に対する安定供給の助けになります。